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ケンスケの王国 マイケル・モーパーゴ 佐藤見果夢訳

ケンスケの王国 マイケル・モーパーゴ 佐藤見果夢訳_c0025437_1547343.jpgちょうど1年前、西日本読書感想画コンクール指定図書であった「イヴの満月」という本(小学校高学年の部)を古本で購入したところ大当たりだったので、これまた古本屋さんで『第47回西日本読書感想画コンクール指定図書中学生の部』という帯を見るなり500円で購入してしまった本です。(児童書は高いよね)

しかーし!!読まれることなく本棚に眠っていること半年以上!!
その要因はズバリ表紙。
桃的センスだと表紙に全く魅力を感じることが出来ずどうしても読む気になれなかったのです。

しかし!!今日は無性にひょいと1冊読んでみたい気分に。(勉強しないといけない時期はこのように様々な逃避手段が私の頭を占領する)
「モモちゃんシリーズ次の読もう!」と思い「未読棚」から取り出しページをめくる。
・・・これ、第二巻でなく第四巻やん・・・↓
間違えて購入していました。
(こういうの前にもあったな・・・恥)

そしてこの本の表紙をめくって裏のとこ読むと・・・
ヨットで世界一周の航海に出たマイケル少年一家。しかし、オーストラリアを過ぎたある日、マイケルは、愛犬ステラとともに夜の海に落ちてしまう。・・・・・・・気がつくと、そこはジャングルにおおわれた無人島。いや、たった一人、奇妙な日本人が住みついていた。その人の名は「ケンスケ」
え!?作者外国人ぢゃなかった?<表紙確認>
やっぱり訳ってことは外国で作られた話だよね!?日本人登場!?
めっちゃテンション上がり(=興味・関心を持ち)読みかかる。

日本人が出てきたり、私が実話だと思いこんでいたりしたので、かなり感情移入して
ドキドキ、そして切なく読めました。
実話だと確信してたから感動はとても大きかったです。
人間って言葉がなくてもこんなにも通じ合えるんだ、
人間と動物はこんなにも心が通じ合えるんやね、
やっぱりこのお守りがあるから助かった・ないからこんなことなった んだね、お守りの力ってやっぱり本当なんだよ、
日本人ってやっぱり素晴らしい気質と手先を持ってるな、とか
色々と・・・思いました!
まさか普通にフィクションとはね、、、今考えればそりゃあそうだけど、あとがき読むまで事実だと思いこんでいました。
確かに、よく「ケンスケ」の漢字わかったなぁ、のちのちどうやって調べたんだろう、とか
植物や動物の種類、のちのち調べたから名前載せてるんだろうけどのちのちまでよくその種類の様子を記憶してたな、とか微妙な疑問はいくつかありましたどね(^^;

ケンスケは、第二次世界大戦の海軍の軍医で船に乗っていました。
でもその船が攻撃され、一人生き残りこの島につきました。
そしてまもなくアメリカが長崎に原爆を落とし、長崎が全滅したことを知ります。
全滅という言葉に勿論妻子も死んだと思い、外の世界へ出ることに何の目的もなくなりました。
40年程たち、そこへマイケルがやってくるのですが・・・まぁそう簡単には仲良くなりません。
色々あったあと二人はとてもいい友達に、そしてマイケルはケンスケにとって息子になりました。
人間を憎んでいたケンスケが「今は二人楽しい」と心から笑っています。
マイケルもケンスケのことが大好きだし、ケンスケの穏やかな笑い方が大好きです。
でも、マイケルには本当の家族が外の世界で生きているのです。
ケンスケのことは大好きだけど、家族の元にも戻りたいと思ってしまう12歳の少年。
また、家族の元へ帰ることが同時に何を意味するのかもわかってしまうからよけいに辛い。
結局、マイケルに言われて、ケンスケは妻のキミも息子のミチヤも生きているかもしれないという
今までに無かった考え方を知ることで「日本」への帰還を考えるようになるものの、
自分の世界は今の日本にはもうないこと、島の動物たちを守っていかなければならないことを理由に、マイケルを迎えに来た船には乗らず、ひっそりと姿を消したのでした。
三つの約束事を言い残して・・・
毎日絵を描き続けること。マイケルは絵の才能があるので北斎のようになれる。
自分のことを思い出して欲しい。満月を見たらお互い相手のことを思うこと。すると二人ともいつまでも忘れない。
この島にケンスケがいることを誰にも言わないこと。マイケルはこの島で一人で暮らしたことにする。ただし、十年経ったら誰に言おうと構わない。そのころには自分は骨だけになっているから。

それで、10年たったのでマイケルが、当時行方不明の間ほんとうはどのように暮らしていたのかを知らせる義務のためと
そしてこの世で唯一マイケルだけが知っているケンスケの人生を世界中の人々に知らせる機会を作るためにこの本を書いた。・・・という話です。

「おわりに」
この本が出版されて四年して、わたしは一通の手紙を受け取った。

マイケルさま
 へたな英語をおゆるしください。わたしはオガワ・ミチヤといいます。ワガワ・ケンスケ医師の息子です。あなたの本を読むまで、父は戦死したものと思っていました。母はそう信じたまま三年前に亡くなりました。あなたが本の中に書かれたとおり、私たちは長崎市内にいました。けれども運のいいことに、原爆が落とされる数日前に、祖母の家を訪ねて田舎に行っていたのです。それで助かりました。
 わたしには父の記憶がありません。写真が何枚かと、あなたの本が手がかりです。父を知っているあなたと、お話ができたらうれしいと思います。いつかぜひ、お目にかかりたいものです。そう願っています。    オガワ・ミチヤ
 
 この手紙をもらってから一ヶ月後、わたしは日本を訪ね、ミチヤに会った。ミチヤの笑い声は、ケンスケにそっくりだった。


えー!!(><)
なんこのドラマ!?やっぱりケンスケはあのとき日本に帰るべきだったんだ。
そうしたら妻子に再会できてたのにっ
ミチヤはこのイギリス人を通して、小さい頃生き別れた父親についてたくましい姿を思い浮かべたり、自分たちのことを思っていた愛情あふれる姿をしったり、それって涙なしには過ごせないとても感動的な時間なんだろうなとか、思って、「現実は小説より奇なり」のやるせなさに色んな想いを馳せていました。

で、そのあとのあとがきでフィクションだたことを知り、しばらく呆然としたものですが(^^;
でも今回は久々に小学生のときのようなドキドキのリアル読みが出来たのでよかったです☆
てかこのコンクール主催の「九州・山口各県図書館協議会、西日本新聞社」の本の選び方最高ですね!
名作だと思います。
ちなみに本作品はイギリスの「子どもの本賞」(子ども向けフィクション対象の、審査員が子どもだけという審査方法をとる」の2000年受賞作品です。
(長編部門はハリーポッターが受賞)
by sumomomomomomo55 | 2005-07-27 15:48 | 絵本・児童書
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